盆踊りのマメ知識

盆踊りの歴史

盆踊り大会
盆踊り大会

 盆踊りの元祖は古代神事に遡り、神に祷りを捧げる巫女舞や白拍子が起源です。江戸時代に流行した歌舞伎や日本舞踊などの商用芸とは異なり、800年以上もの長い歴史に支えられた、日本の舞踊芸能の中で最も格の高い伝統奉納舞踊です。

 このような高尚な奉納舞踊が一般民衆にも下向し、盂蘭盆に、霊魂を迎え、死者を供養するための行事として、主に新仏教が栄えた鎌倉時代に一気に広まりました。その後、自らの極楽往生を願って陽気に明るく踊るようになります。

  そして現代では、多くの人が踊りを愉しむ、夏の代表的な娯楽として定着し、最近では、若い人を中心に再び人気が高まっています。

日本人につながる和の心

日本の美
日本の美

 盆踊りで使用される楽曲は、永く日本人に愛され続けてきた和の旋律で構成されています。また、一つ一つの所作に関しても美しい日本人の姿を表したものばかりです。

 リズム、節回し、メロディ、所作、、、全ての中に、和の伝統が生きています。皆で踊る3分間のドラマの中には、日本人としての悦びや哀しみ、喜怒哀楽が凝縮されているのです。盆踊りに参加することで、心の奥底に隠れていた、日本人としての「本来の自分」に出逢えるかもしれませんね。

循環をあらわす盆踊り

循環する盆踊り
循環する盆踊り

 櫓を中心に円になって、同じ場所をグルグル廻ります。また、振り付けも一連の所作の繰り返しで、グルグル廻ります。つまりA→B→C→D→A→B→C→D→A→B→、、、複素平面での回転を彷彿とさせる美しさがありますよね。

  ところで盆踊りは、神事に加え仏教の流れも汲んでいます。仏教の教えは、転生輪廻、因果応報、と、基本的にはグルグル循環いたします。思えば、地球の軌道は循環し、一年の四季も循環し、一週間は循環し、一日は循環します。知らず知らずのうちに、人は皆、「循環」の中を生きているのかもしれません。

踊りを取り巻く基本構造

踊りを取り巻く基本構造
踊りを取り巻く基本構造

 一つ一つの楽曲には意味があり、作家の魂が込められています。例えば炭坑節の振りには一つ一つに意味があります。別の曲を炭坑節の振付で踊る、と言うのは作品に対しての冒瀆行為であり言語道断です。

 できれば、振りのマニュアルをただ覚えるだけではなく、歌詞、メロディ、心情、背景、由来、歴史など、日本文化としての人文科学の観点から、きちんと解釈をしてみましょう。

 踊りとは、歴史や文化によって形成された、人間の心情の発露であるため、踊りと言う表層部を支える、目に見えない深層部に焦点をあてると、面白さが倍増します☆そして盆踊りは大衆文化として発展してきたため、積年の人類の営みが凝縮されています。日本人とは何か、人間とは如何なる存在か、そして自分は如何にして生きるべきか、など様々なヒントが隠されています。

 これを頭で考えるのではなく、踊りを愉しむ中で自然と感じていきましょう!盆踊りを追究することで、周りの風景が、あなたの未来が、ガラッと変わります

民舞や民踊の「民」の意味は?

 人々の生活に根差して発達した民踊・民舞ですが、 「民」には「素人の・アマチュアの」と言う意味があります。例えば「民謡大会」は今で言うと「のど自慢大会」「カラオケ大会」ですね。つまり「民踊」「民舞」の世界にはプロは存在しません。歌舞伎や日本舞踊は商用芸なので流派などの縦の関係を重んじますが、盆踊りは皆、横に並んでいる平等の関係です。

 ただ、そうは言っても歴史が長いので、詳しい人や上手い人が、知らない人に教えていく過程でセミプロ化し、各々の教授者の踊り方によって、だいぶ基準が異なってきました

盆踊りにおける「ハレとケ」

盆踊りにおける「ハレとケ」
盆踊りにおける「ハレとケ」

 日本には昔からハレとケを分ける文化があります。ハレは非日常を表し、改まった型式のことを指します。 一方、ケは日常を表し、普段通りの型式を指します。

 多くのお祭りや催しは、その日のために準備をして、衣裳も改めて臨む「ハレの芸能」です。 一方、盆踊りや民謡などは、あくまでも日常の延長、日々の生活の営みから派生したものであり「ケの芸能」です。その意味では、普段着で盆踊りに参加したり、仕事帰りにふらっと立ち寄るのも、寧ろ正統的な楽しみ方と言えるかもしれません。

 中には盆踊りや民謡に泥臭さを感じる方がいるかもしれませんが、それは毎日の日常生活を背負った「生命の泥臭さ」なのです。また、 思いっきり羽目を外し過ぎている人やふざけて踊っている人に厳しい眼を向けるのも、そこが「日常の場」であるからなのでしょう。大型の盆踊り大会の多くが平日を跨いで(金土など)開催されているのも、「日常の延長」と言う意味合いがあるからなのです。

現代の盆踊り

現代の盆踊り
現代の盆踊り

 時代が進むにつれ、人々の生活のリズムも変化します。残念ながら、民謡や民踊は現代のリズムとは程遠いものになってしまいました。「生活のリズムに根差して踊る」と言うのが民踊の原点であるため、その点に立ち返り、現代では、人々の耳に馴染みやすい「音頭」や「歌謡曲」、つまり現代の生活のリズムを用いた盆踊りが主流となっています。

 やはり「知っている曲」がかかると、輪に入りやすいですよね。民踊とは「一般の民衆の踊り」なので、民謡が「古典民踊」なら、公園などで踊っているヒップホップなどは「現代民踊」と言えます。

盆踊りの効果

盆踊りで運気上昇!
盆踊りで運気上昇!

 さて、盆踊りを踊ると、どのような効能があるのでしょうか。日々のストレス発散・リフレッシュ効果、適度な運動、美しい姿勢や所作の習得は言うまでもありませんが、古くは神仏に捧げ、霊魂を迎えるところに端を発していることから、盆踊りは「幸運を招く」とも言われています。

 明るく陽気な盆踊りに招かれる霊魂は、幸運をもたらす善霊であり、逆に、暗くて陰気な悪霊は太鼓や鳴り物の音に逃げ出してしまいます(盆踊り曲の中には濁声の歌もありますが、これには毒を以て毒を制す「悪魔祓い」の側面があります)。「鬼は外、福は内」は節分の時の決まり文句ですが、同様の効能が盆踊りにもあるんですね。皆さんも、盆踊りを明るく陽気に踊って、運気を上昇させましょう!

盆踊りの踊り方

盆踊りの踊り方
盆踊りの踊り方

 盆踊りは神事仏事に当たります。古代の巫女舞や白拍子を元祖とし、素朴かつ静かでありながら、凛々しく神々しく踊ることで、神仏に祷りを捧げます。奉納舞踊は800年以上もの長い歴史に支えられた、日本の芸能の中で最も格の高い伝統的な踊り方です。

 奉納舞踊は技術も必要ですが、何よりも神仏に捧げる謙虚純白なる気持ちで踊ることが大切です。あまり誇張をしたり振りを大きくするのではなく、無駄のない動きで、中に溶け込むような自然かつ素朴な踊り方をしましょう。

「日本古来の踊り方」と「江戸の踊り方」

 日本の伝統的な舞踊は元々奉納舞踊でしたが、江戸時代に娯楽性(装飾)の強い舞台舞踊として歌舞伎や日本舞踊などの商用芸の踊り方が流行り、時代が下るにつれ、差別化のための装飾が強くなっていきました。

舞踊だけではなく、日本藝能において「江戸文化」は他の時代と系統が独立しているため「日本文化」と「江戸文化」は区別します。日本舞踊の上手いところは「江戸舞踊」ではなく「日本舞踊」と言う名称を使ったことです。名称は非常に重要ですね。

踊り方・基礎

  • 基本の姿勢

 まず目一杯胸を張って、みぞおちに紐がついていて、斜め上に引っ張られるようにします。次に重心を落とし「丹田(おへその下の辺り)」で上半身を支えます。

  • 盆踊りの基本は「トン・スー・トン」

  踊りの基本は書道と同じです。手首は固定し腕を動かします。トンと出発して、スーと伸ばし、トンと止まる(「トンッ!」ではないので注意)。頭の上に何か載せているように頭部を固定して踊ります。

  • 視界の中に納める

 ダンスと異なり、和装は目一杯動くと美しくありません。目安として、視界の範囲内で所作をするようにすると良いでしょう。

「粋な踊り」と「野暮な踊り」

 「粋な踊り」とは「その場に調和する自然な踊り」であり、「野暮な踊り」とは「独り善がりの踊り(わざとらしい踊り)」です。

※ 服装のオシャレと同じ!

 オシャレとは、「その場に調和する自然な格好」の中にあります。逆に、その服装に「私ってオシャレでしょ?」と言う自惚れが見えてしまった瞬間「オシャレな格好」は「痛い格好」になります。

※ 料理に例えると・・・

 「粋な踊り」は「素材本来の味を大切にした料理」、「野暮な踊り」は「化学調味料を沢山使って味を作った料理」

何となくわかりますか?

粋な踊り方

 少し慣れてくると、驕りが生まれ目立とうとして舞台舞踊を真似た踊りになりがちですが、盆踊りで舞台舞踊の踊り方をすると、野暮な踊りに見えます。目立とうとする私欲を消し、神仏に捧げるような謙虚な気持ちが大切です。

 以下の点に気を付けて粋に踊ってみましょう。気を付けたいのは「余計な動きをしない」「きちんと止まる」「手首だけで踊らない」の3点です。

  • 無駄の無い動

 余計な勢いをつけないこと。無駄が多いと野暮に見えます。

「視点転換は最低限に」

 自分の手ばかりを見るのは「私の手、綺麗・・・」と言う自惚れ踊りになってしまうので注意してください。

  • しっかり止まり余韻を残す

 「日本の美」は「動」ではなく「静」にあります。次の所作への勢いをつけてしまったり、力を入れてしまったり、余計な動きを入れてしまうのは逆効果です。無駄な動きを削ぎ落とし、その分、「静」に意識を向ければ、格段に美しくなります

 例えば4拍で動く場合、○○○●と最初の3拍○○○を均等に動き、4拍目を●静止します。●が最も大切で「●のために」〇〇〇を動くのです。●は動きを止めるだけで良く、余計な所作は不要です。

重要 「美しさ」とは動きではなく余韻。

  • 「肘から指先まで」を意識

 手首だけ動かすのはNG(歌で例えると「咽だけで声を出している状態」)です。手首だけではなく、肘から袖、指先までの全体で踊りましょう(歌で例えると「お腹から声を出している状態」)。袖から手首だけが見えるので、素人目には手首だけを捻っているように見えるかもしれませんが、肘から指先まで(肘から団扇の先端まで)全体を意識します。

粋に踊ろう!

 目立って注目を浴びようとする野暮な踊り方が多く、本来の素朴な踊りをしている人は非常に少なくなっています。しかし、昔ながらの伝統的な民踊団体には確実に受け継がれています。独り善がりにならず「盆踊りの精神」を忘れずに、地味ですが素朴な踊りをしてください。

「simple is best」

「過ぎたるは及ばざるが如し」

どの位置で踊るか

 本気で踊りを覚えたい場合は、内側の「踊れる人」の近くで踊ることをオススメします。早く振りを覚えることができます。

 なかなか「踊れる人」の中に入るのは勇気がいるかもしれませんが、盆踊りの世界には序列は存在せず、全員が平等の関係です(但し、櫓の上は一段高くなるので注意!)。

  距離を置きながら恐る恐る踊るより、積極的にレベルの高い環境に身を置いて、必死に覚えた方が早く上達しますよね。 内側や櫓の上にいても「踊れてない人」をお手本に見る人はいないので、 自分が気にしているほどには、誰も見ていません(黒子のように「いないもの」として目を瞑ってもらえます)

  一生懸命覚えて早く初心者のお手本に採用してもらえるように頑張りましょうね。

 初めは「見ながら」踊り、次に「見ずに」踊れるようになり、そして「見られて」踊り、次の人へ踊りをつなぐ、、、

  実は、ここにも「踊りの輪」が形成されているのです。

 

補足

  「踊れる人」の中には目立ちたいがためにかなり派手に装飾を加えている人もいます。

 その人を見て覚えてしまうと、どれが本来の振付で、どれが装飾なのかわからないため、覚える際は、なるべく癖のない人を見るようにしましょう。